整数の範囲では加法に関する逆元 (加えたら0になる数) が存在します.
◇加法に関する逆元◇
$x$ を整数とする.
- ① $x+m=m+x=0$ となる整数 $m$ がただ1つ存在する.
- ② ①の $m$ を $-x$ で表す.
- ③ $-(-x)=x$
①について,存在することは $x$ の正負で分けて証明できます.
$n$ を自然数とする.
$x=n$ のとき $x+(-n)=(-n)+x=0$,
$x=0$ のとき $x+0=0+x=0$,
$x=-n$ のとき $x+n=n+x=0$
である.
よって,すべての整数 $x$ に対し,$x+m=m+x=0$ となる整数 $m$ が存在する.
ただ1つであることを示すには,$x+m=m+x=0$,$x+m^{\prime}=m^{\prime}+x=0$ から $m=m^{\prime}$ を導けばよいです.これは次のように証明できます.
整数 $m,m^{\prime}$ が$ x+m=m+x=0$,$x+m^{\prime}=m^{\prime}+x=0$ を満たすと
き,
$m=m+0$
$=m+(x+m^{\prime} )$
$=(m+x)+m^{\prime}$
$=0+m^{\prime}$
$=m^{\prime}$
であるから,$x+m=m+x=0$ となる整数 $m$ はただ1つである.■
①の $m$ を $-x$ と表しますが,$x$ が自然数の場合は負の整数の定義の通りです.$x$ が負の整数のとき,例えば $-2$ の逆元は$2$なので,$-(-2)=2$ です.
$(-2)+2=2+(-2)=0$ であるから,$-(-2)=2$
一般に③の$ -(-x)=x$ が成り立ちますが,証明は練習問題にします.
練習問題
③を証明せよ.
解説
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