加法に関する逆元を用いて整数の減法が定義できます.整数の範囲では,いつでも引き算ができます.
◇整数の減法◇
$x,y$ を整数とする.
- ① $x-y$ を $x+(-y)$ で定める.
- ② $x=y+m$ となる整数 $m$ は $x-y$ のみである.
例えば $5-8$ や $3-(-4)$ は,次のように計算します.
- (1) $5-8=5+(-8)=-(8-5)=-3$
- (2) $3-(-4)=3+{-(-4)}=3+4=7$
また,複数の加法や減法を考えるときは,減法 $-a$ を加法 $+(-a) $ にして計算します.例えば,$8-(-2)-3$ は次のように計算します.このように定めることで,$\{8-(-2)\}-3$ の $\{\ \}$ を省くことができます.
$8-(-2)-3$
$=8+\{-(-2)\}+(-3)$
$=8+2+(-3)$
$=10+(-3)=7$
②について,$m=x-y$ のとき $x=y+m $が成り立つことは,$x-y$ の定義から分かります.逆に,$x=y+m$ から $m=x-y$ を導くことで,$m=x-y$ のみであることが分かります.
$m=x-y$ のとき,
$y+m=y+(x-y)$
$=y+x+(-y)$
$=x+y+(-y)$
$=x+0=x$
であるから,$x=y+m$ が成り立つ.
逆に,整数 $m$ が $x=y+m$ を満たすとき,
$m=0+m$
$=(-y)+y+m$
$=(-y)+x$
$=x+(-y)$
$=x-y$
であるから,$x=y+m$ を満たす整数 $m$ は $x-y$ のみである.■
この証明では $x=y+m$ の両辺に $-y$ を加えて $x-y=m$ を導きました.このように,加法に関する逆元を加えて,右辺の $y$ の項を左辺に移すことを移項といいます.
整数の減法を定義しましたが,②から自然数の減法の定義に矛盾しないことが分かります.例えば $8-5$ は,自然数の減法の定義では,$8=5+n$となる $n $を表し,整数の減法の定義では$ 8+(-5) $ を表しますが,どちらの定義でも同じ値になります.このように,矛盾なく定義されていることを well‐defined であるといいます.
練習問題
次の式を計算せよ.
(1) $9-12$ (2) $ -15-(-7)$ (3) $ 9-17-(-13)+5$
解説
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