[2-7] 整数の減法

加法に関する逆元を用いて整数の減法が定義できます.整数の範囲では,いつでも引き算ができます.

◇整数の減法◇

$x,y$ を整数とする.

  1. ① $x-y$ を $x+(-y)$ で定める.
  2. ② $x=y+m$ となる整数 $m$ は $x-y$ のみである.

例えば $5-8$ や $3-(-4)$ は,次のように計算します.

  1. (1) $5-8=5+(-8)=-(8-5)=-3$
  2. (2) $3-(-4)=3+{-(-4)}=3+4=7$

また,複数の加法や減法を考えるときは,減法 $-a$ を加法 $+(-a) $ にして計算します.例えば,$8-(-2)-3$ は次のように計算します.このように定めることで,$\{8-(-2)\}-3$ の $\{\ \}$ を省くことができます.

$8-(-2)-3$
 $=8+\{-(-2)\}+(-3)$
 $=8+2+(-3)$
 $=10+(-3)=7$

②について,$m=x-y$ のとき $x=y+m $が成り立つことは,$x-y$ の定義から分かります.逆に,$x=y+m$ から $m=x-y$ を導くことで,$m=x-y$ のみであることが分かります.

$m=x-y$ のとき,
 $y+m=y+(x-y)$
    $=y+x+(-y)$
    $=x+y+(-y)$
    $=x+0=x$
であるから,$x=y+m$ が成り立つ.

逆に,整数 $m$ が $x=y+m$ を満たすとき,
 $m=0+m$
  $=(-y)+y+m$
  $=(-y)+x$
  $=x+(-y)$
  $=x-y$
であるから,$x=y+m$ を満たす整数 $m$ は $x-y$ のみである.■

この証明では $x=y+m$ の両辺に $-y$ を加えて $x-y=m$ を導きました.このように,加法に関する逆元を加えて,右辺の $y$ の項を左辺に移すことを移項といいます.

整数の減法を定義しましたが,②から自然数の減法の定義に矛盾しないことが分かります.例えば $8-5$ は,自然数の減法の定義では,$8=5+n$となる $n $を表し,整数の減法の定義では$ 8+(-5) $ を表しますが,どちらの定義でも同じ値になります.このように,矛盾なく定義されていることを well‐defined であるといいます.

練習問題

次の式を計算せよ.
(1) $9-12$ (2) $ -15-(-7)$ (3) $ 9-17-(-13)+5$

解説

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