[2-16] 乗法に関する簡約法則と整数の除法

整数の乗法について簡約法則が成り立つので,自然数と同様に除法を定義できます.

◇乗法に関する簡約法則と整数の除法◇

$x,y,$z を整数とする.

  1. ① $xz=yz$,$z≠0$ のとき $x=y$ [簡約法則]
  2. ② $y≠0$ とする.$x=ym$ となる整数 $m$ が存在するとき,このような $m$ はただ1つである.
  3. ③ ②の $m$ を $x÷y$ で表す.

例えば$1⋅0=2⋅0$ なので,$z=0$ のときは簡約法則は成り立ちません.
$z≠0$ のとき,$z>0$ または $z<0$ なので,乗法と順序の性質から $x≠y$のとき $xz≠yz$,つまり簡約法則が成り立ちます.

  1. ① $xz=yz$ のとき,$x>y$ と仮定すると,$z>0$ なら $xz>yz$,$z<0$なら $xz<yz$ であるが,これは $xz=yz$ であることに矛盾する.
    よって,$x≦y$ であり,同様に $x≧y$ であるから,$x=y$ である.■

②を示すには,2つを考えてそれらが一致すること,つまり,$x=yn=yn^{\prime}$ から $n=n^{\prime}$ を導けばよいです.交換法則から$ ny=n^{\prime} y$ と変形できるので,①から $n=n^{\prime} $ が導けます.

  1. ② 整数 $m,m^{\prime}$ が $x=ym=ym^{\prime}$ を満たすとき,$my=m^{\prime} y$,$y≠0$ であるから,①より $m=m^{\prime} $ である.■

②により,整数の割り算が定義できます.例えば,$24÷(-4) $ や $(-56)÷(-7)$ は次のように計算できます.

  1. (1) $ 24=(-4)⋅(-6)$ であるから,$24÷(-4)=-6$ である.
  2. (2) $-56=(-7)⋅8$ であるから,$(-56)÷(-7)=8$ である.

整数 $x,y (y≠0)$ に対し,$x=ym$ となる整数 $m$ が存在しないこともあるので,整数の範囲で常に $x÷y$ が定義されるというわけではありません.例えば,$7=(-2)⋅m$ となる整数 $m$ は存在しないので,整数の範囲で $7÷(-2)$ は定義されません.

練習問題

次の式を計算せよ.
(1) $42÷(-6)$ (2) $(-91)÷(-13)$ (3) $(-2021)÷47$

解説

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