自然数の加法について,次の性質が成り立ちます.
◇自然数の加法の性質◇
$x,y,z$ を自然数とする.
- ① $(x+y)+z=x+(y+z)$ [結合法則]
- ② $x+y=y+x$ [交換法則]
$x+y+z $と書くと,$x+y$ と $y+z$ のどちらの「+」を先に計算するかが定まりませんが,結合法則は計算の順序によらず,結果が同じであることを表します.つまり,$x+y+z$ と括弧を省略して書くことができます.
交換法則は,計算の順序を入れ替えられることを表します.例えば,$13+29+37$ は $42+37=79$ と計算してもよいですが,次のように計算できます.
$13+29+37$
$=13+37+29$
$=50+29=79$
このように,順序を工夫することで,計算が簡単になることがあります.
結合法則は,$z$ についての数学的帰納法を用いて証明できます.$z=1$ の場合は加法の定義から成り立つことが分かります.
- (i) $z=1$ のとき,加法の定義から
$(x+y)+z$
$=(x+y)+1$
$=x+(y+1)$
$=x+(y+z)$
$z=k$ での成立を仮定し,$z=k+1$ の場合を考えると,加法の定義から$(x+y)+(k+1)={(x+y)+k}+1$ です.$(x+y)+k$ の部分に仮定が利用でき,$z=k+1$ での成立が確認できます.
- (ii) $z=k$ のとき,①が成り立つと仮定すると,
$(x+y)+(k+1)$
$=\{(x+y)+k\}+1$
$=\{x+(y+k)\}+1$ (∵ 仮定)
$=x+\{(y+k)+1\}$
$=x+\{y+(k+1)\}$
であるから,$z=k+1$ のときも①は成立する.■
交換法則も同様に帰納法で証明できますが,証明は練習問題とします.
練習問題
(1) $18+47+63+89+172$を計算せよ.
(2) ②を証明せよ.
解説
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