自然数の加法について簡約法則が成り立ちます.また,このことから減法(引き算)を定義できます.
◇加法に関する簡約法則と自然数の減法◇
$x,y,z$ を自然数とする.
- ① $x+z=y+z$ のとき $x=y$ [簡約法則]
- ② $x=y+n$ となる自然数 $n$ が存在するとき,このような $n$ はただ1つである.
- ③ ②の $n$ を $x-y$ で表す.
簡約法則は「足して同じなら元々同じ」ということを表します.これは $z$ に関する数学的帰納法で証明できます.$1+1,2+1,⋯$ はすべて異なるので,$x+1=y+1$ のとき $x=y$ です.以下の証明ではこれを用いています.
- ① (i) $z=1$ のとき,$x+1=y+1$ であるから,$x=y$ である.
- (ii) $z=k$ のとき,①の成立を仮定し,$z=k+1$ のときを考える.
$x+(k+1)=y+(k+1)$ のとき,$(x+k)+1=(y+k)+1 $
であるから,$x+k=y+k $である.
仮定より $x=y$ であるから,$z=k+1$ のときも①は成立する.■
- (ii) $z=k$ のとき,①の成立を仮定し,$z=k+1$ のときを考える.
②を示すには,2つを考えてそれらが一致すること,つまり,$x=y+n=y+n^{'}$ から$ n=n^{'} $ を導けばよいです.交換法則から $n+y=n^{'}+y $と変形できるので,①から $n=n^{'} $ が導けます.
- ② 自然数 $n,n^{'}$ が $x=y+n=y+n^{'}$ を満たすとき,$n+y=n^{'}+y$であるから,①より $n=n^{'}$ である.■
②により,自然数の引き算が定義できます.例えば,$8-3$ や $16-7$ は次のように計算できます.
- (1) $8=3+5$ であるから,$8-3=5$ である.
- (2) $16=7+9$ であるから,$16-7=9$ である.
減法の計算結果を「差」といいます.例えば,$8$ と$3$の差は$5$です.
自然数 $x,y$ に対し,$x=y+n$ となる自然数 $n$ が存在しないこともあるので,自然数の範囲で常に x-y が定義されるというわけではありません.例えば,$2=5+n$ となる自然数 $n$ は存在しないので,自然数の範囲で $2-5$ は定義されません.
練習問題
次の式を計算せよ.
(1) $13-7$ (2) $83-56$ (3) $264-187$
解説
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