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[1-9] 累積帰納法

これまでに示した順序の性質から,自然数は小さい順に 1,2,3, であることが分かります.このことに注目することで,数学的帰納法の仮定を強めることができます.

◇累積帰納法◇

自然数 n に関する性質 P について,

  1. n=1 のとき P が成り立つ.
  2. n=1,2,,k のとき P が成り立つと仮定すると,n=k+1 のときも P が成り立つ

2つが成り立つとき,P はすべての自然数 n で成り立つ.

通常の数学的帰納法では n=k のみを仮定しますが,累積帰納法では n=1,2,,k のすべてを仮定します.累積帰納法も数学的帰納法と呼ばれることが多いです.

自然数は小さい順に 1,2, なので,P が成り立たない n があると仮定すると,P が成り立たない最小の n が存在します.これに注目することで,累積帰納法は次のように証明できます.

㋐,㋑の2つが成り立つとき,ある自然数 nP が成り立たないと仮定し,P が成り立たない n の最小値を n=m とする.
㋐より m2 であり,n=1,2,,m1P は成り立つから,㋑より n=m のときも P が成り立つことになり矛盾する.■

§3で「すべての自然数が素因数分解できる」ということを証明しますが,その証明では累積帰納法を利用します.

練習問題

自然数 n に関する性質 P について,

  1. n=1,2 のとき P が成り立つ
  2. n=k,k+1 のとき P が成り立つと仮定すると,n=k+2 のときも P が成り立つ

2つが成り立つとき,P はすべての自然数 n で成り立つことを証明せよ.

解説

本記事の動画解説(YouTube)はこちら→【厳密に学ぶ高校数学#10】[1-9]累積帰納法

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