[2-11] 整数の乗法と加法に関する逆元

加法に関する逆元は,乗法を用いて考察できます.

◇整数の乗法と加法に関する逆元◇

$x,y$ を整数とする.

  1. ① $-x=(-1)⋅x$
  2. ② $-(xy)=(-x)⋅y=x⋅(-y)$
  3. ③$ -(x+y)=-x-y$

①は,加法に関する逆元は $-1$ をかけたものであることを表します.証明するためには,$-x$ の定義から $x+(-1)⋅x=(-1)⋅x+x=0$ であることを確かめればよいですが,これは交換法則と分配法則を用いて次のように示すことができます.

$(-1)⋅x+x=x+(-1)⋅x=(1-1)⋅x=0⋅x=0$ であるから,
  $(-1)⋅x=-x$ ■

$-xy$ と書くと$ -(xy)$ と$ (-x)⋅y$ の区別がつきませんが,②からどちらも同じなので,括弧を省略して $-xy $と書くことができます.②,③は加法の逆元の定義に従って証明することもできますが,①を利用することで,乗法の性質を用いて証明できます.

  1. ② $ (-1)⋅xy=\{(-1)⋅x\}⋅y=x⋅\{(-1)⋅y\}$ であるから,
       $-xy=(-x)⋅y=x⋅(-y)$ ■
  2. ③ $(-1)⋅(x+y)=(-1)⋅x+(-1)⋅y$ であるから,
        $-(x+y)=-x-y$ ■

練習問題

加法の逆元の定義に従って,②,③を証明せよ.

解説

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